リーマンショックに限らず、世界のどこかで何か悪い事が起こると、判で押したように円高・ドル安にふれるのはなぜなのか?
私は先月まで、こんな基本的な事も知りませんでした。
まあ、デイトレーダーは経済音痴でも十分務まるので問題ありませんが、やっぱり知らないよりは知ってた方がベターだと思います。
日本のバブルが崩壊した1990年以降、国内の景気回復の為に「ゼロ金利政策」が長く続きました。
お金が国内で潤沢に流れれば消費や投資が上向くと考えられるのがその理由です。
ところが、それは日本限定の見方であり、日本が国際社会の一員である事を忘れています。
地球上に金利1%の国があり、また別の所では金利5%の国があるとする。
だったら金利1%の国でお金を借りて、金利5%の国で運用すれば、労せずして4%の利益を得る事ができます。
更に、金融の世界ではレバレッジという魔法の杖が使えるので、年利4%の商品をレバレッジ10倍で運用すれば年利40%の儲けになります。
1億円借りて、1年で4千万円の利益が出せれば、誰でもウハウハですよね?
円を借りてドルに替える。
そのドルで中国やインドの株を買ったり工場に投資したり、石油や金などの商品相場で儲ける。
アメリカの投資銀行やヘッジファンドは、これで稼ぎまくっていたらしいのです。
今年、日本の漁師さんが燃料高騰の為に漁に出るに出られない事がニュースで流れていました。
「中国などの需要が高まっているからだ!」
みたいな尤もらしい見解もありましたが、実際には日本の低金利政策が生み出した「金利の歪み」が原因であり、その原資は他ならぬ「円」だった訳です。
円は日本国内を潤さないで、海外の投機家達を潤していたと言うのです。
この低金利の円を借りてドルに替えて儲ける事を円キャリートレードと言います。
この円キャリートレードで儲かる条件としては、日本の金利が低い事と、円安ドル高傾向が続く必要があります。
ところが一たび「円高」に傾くと、儲けの構造は損失の構造に早変わりします。
これはFXでスワップ狙いでドルを持った経験のある方なら、経験的に理解されているはずです。
「円高だ!」
という事になれば、一刻も早く逃げるしかありません。
ガソリンを買っていたのなら、さっさと売って現金化し、借りていた円を返す必要があります。
「円キャリートレード」は、世界のどこかで歯車がちょっと狂うだけで、今度は我先にとドル売り円買いの一方通行的な流れとなり、止め処ない円高トレンドが起こります。
これを
「円キャリートレードの巻き戻し」
と呼びます。
一旦巻き戻しのスイッチが入ると、連鎖反応的に世界のあらゆる投機市場で巻き戻しが繰り返されるのです。
世界的に異常なまでの低金利政策を続けてきた結果、世界の投機家達に「低コストのマネー」として利用され続け、そのツケが連鎖反応的なまでの円高として日本に帰ってきているのが、現在の状況です。
最近米国が大幅な利下げに踏み切った事から、「円キャリートレード」による「儲けの公式」はとりあえずは崩壊したと考えられますが、金利のアンバランスは長年続いていましたから、まだどれほどの「巻き戻し余力」が世界の投機家のポジションに残されているのかは見えません。
今後何か悪いニュースがどこかの国で起こってまた円高に振れたら、「巻き戻し余力」がまだ残っていたと理解して下さい。
今本屋に並んでいる関係書籍の殆どは上記の説明で問題ないのですが、藤巻健史氏の「マネーはこう動く」(光文社刊)では否定されています。
「リスクの高いヘッジファンド等に低金利で貸し出す銀行などは無い。」
というのが氏の論拠です。
藤巻さんの本は面白くてためになるので、今までにも何冊も読んできました。
でも、この本ではサブプライムローン問題を完全に読み違えてますし、昨今の激烈な円高傾向は「円キャリートレードの巻き戻し」説が正しい事を裏付けていると思われます。
次の本で何を書かれるのか、ちょっと意地悪ですが楽しみにしています。
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