「嵌め込みとは、証券会社等が善良な個人投資家を欺き、資金を巻き上げる行為」
と一般には受取られています。
確かにそういった側面がある事を否定しませんが、
「大きな勘違い」
がある事について言及したいと思います。
「投資家」とは何ですか?
株式投資の場合、無数にある株式会社から、将来性があり成長の見込みがあるものを選び、見込み通りその会社が成長した時に得られるキャピタル・ゲインや、比較的高い配当利回りを期待してお金を投資する人の事です。
その行為はまさに資本主義経済のエネルギー源です。
思惑通りに会社が成長して利益が得られるかどうかは、「投資家」の判断に対する自己責任の範囲の問題ですが、その投資家を欺くような、例えば「粉飾決算」等が犯罪である事は明らかです。
そうした犯罪から、国は投資家を守っているという事を示す必要があり、これができていなければ、その国は「資本主義経済」の看板を下ろさねばなりません。
では、短期の取引を頻繁に繰り返すデイトレーダーは「投資家」でしょうか?
明らかに違いますよね?(「塩漬け」でトレードをあきらめた長期保有者は、しかたなく「投資家」の道を選んでしまったと言えなくもありませんが、「塩漬け」を目論んで参入したのでない事は明らかであり、やっぱり投資家とは言えないと思います。)
短期売買は「投機」であり、短期トレーダーは「投機家」なのです。
「投機」を広辞苑で調べると、
・市価の変動を予想して、その差益を得るために行う売買取引。
と書いてあります。
「投機」とは解りやすく言えば「ギャンブル」であり、従って「投機家」とは「ギャンブラー」です。
あなたが意識していようといまいと、あなたがデイトレやってるなら、あなたも立派なギャンブラーです。
証券会社の嵌め込みにあったからって、腹を立てるのは、少し違うと私は思うのです。
なぜなら、証券会社がプロなら、あなたもプロだから。
証券会社が「見せ板」と「偽ブレイク」を演出する場合、相当のリスクを負っています。
もしかしたら「見せ板」のつもりの空売り注文を、大きな資金力のある誰かが一気に買占め、さらに踏み上げてくるかもしれません。
相手は小口デイトレーダーばかりとは限らないのです。
もし、全く架空の見せ板(買い注文をぶつけても買えない板)なんてものを証券会社で作れるのであれば、これはまさしく「イカサマ」であり、許されるものではありませんが、普通に注文を出したり、引っ込めたりしている事において、資金力の差こそあれ、「投機行為」である事に違いは無いと思うのです。
こういう事を書くと、反感を覚える方も一杯いらっしゃると思いますが、あえて正直な気持ちを書いています。
「嵌め込み」を「悪」と思うのは勝手ですが、あなたがやっている「デイトレ」と本質的な違いは無いという事について考えてみませんか?
なぜなら、あなたも「安い」と思うからこそ、人に先んじて買おうとするし、「もう下がりそう」だと思うから、大急ぎで誰かに売りつけてるんですよね?
「デイトレ」って、誰かに損してもらわないと、儲けられないのです。
ここが「投資」と全然違うところです。
無邪気に
「100万を元手に1億目指す!」
なんて目標を掲げるのは自由ですが、じゃ、だれがその9900万円を払ってくれるのか?
もし目標を達成できたとしたら、その9900万円の殆どは、そのトレーダーより弱いトレーダーから奪い取っているのです。
バーンスタインのデイトレ入門、実戦で引用しましたが、
有望なターゲットとは、チャートのポイントであると同時に、もっと生々しく言えば、「自分より弱いトレーダー」なのです。
びっくりされた方もいるかもしれませんが、これが現実であり、デイトレなのです。
「私は健全な「投資家」であり、誰にも損させることなくデイトレで儲けてみせる。」
そんな「寝言」みたいな考えで、生き残れる訳がありません。
「優位性について考える」のカテゴリでは、マーケットに狼とブタがいると書きましたが、これは単なるたとえ話なんかではありません。
本当にあなたも狼になって、ブタを食べない限り、生き残る事などできないのです。
もしこの事実に嫌悪を覚えるのであれば、資金が残っている今のうちに、デイトレ以外の道を探した方が良いと思います。
「嵌め込み」にあって証券取引等監視委員会に訴えるのは全くの自由ですが、その前にどうやって「嵌め込み」にあわないか、自衛の為の方策を検討される方が遥かに効果的だと思います。
一応「見せ板等は違法」とはなっているものの、証券取引等監視委員会が守るべきは「投資家」であって「投機家」ではないのです。
マーケットには「ブタ」と「狼」がいますが、これは言い換えれば「弱いプロ」と「強いプロ」なのであり、「プロ」である限り、その責任は自分で負うしかなく、所詮誰も助けてはくれません。
まるで守銭奴のように聞こえるが、これがトレーディングなのだ。